エースナンバー
「…」
美空はギュッと唇を閉じる。
その姿は、どう見ても弱々しい女だ。
「おい…」
「…」
「美空!」
俺が声をあらげると、美空の肩がすくむ。
――…くそ
分からないけど…イライラした
こんなやつがエース…?
こんなやつがマウンドに立っているんだと思うと…苛立つ。
「話せねぇような理由なのかよ…」
「麻生くんにはきっと分からない」
「……は?」
美空の吸い込まれそうな瞳が、俺を捕らえた。
「麻生くんは…野球やってても、誰からも咎められないだろ?」
――…!
「んなの…当たり前だろ」
俺から野球を否定しようとするやつらなんて…俺を妬んでいたやつらだけだ。
「俺は…私は、違う」
キュッと美空が胸を握る。
「女だから…野球出来ない。」
「…え?」
「いつからか…誰も私を入れてくれる野球チームがなくなった」
"私が…女だから"
美空の長い睫毛が…
頬に影を落とした。