エースナンバー
「そういえばさ…」
優斗が、思い出したように切り出した。
「なに?」
「新学期から、うちの学年にT高のやつがくるらしいぜ」
「T高って…大阪の?」
「多分…確証はないけど」
T高って…野球の名門校だよね…
野球部が来るのかな…
「お前…野球部のやつだったらいいなーとか思ってるだろ」
私を見透かしたように優斗が軽くため息をついてぼやいた。
「…………え?」
「わかりやすいんだよ…お前。
俺は嫌だぜ?
T高から来たやつなんて、プライドが高いやつに決まってる。
そのくせ、簡単に崩れるやつとかな」
優斗が表情をしかめる。
「そうだね…でもあと一人くらいチームに凄いやついた方が…」
私が呟くと、今度は更に眉間の皺を深めた。
「甲子園に行ける…って?」
――…!
「…人の心読めんのかよ?」
「ちげーよ、もう耳ダコ…お前、それ口癖じゃん?」
苦情気味に笑う優斗…。
「何だよ…行く気ないわけ?」
「…まさか」
でも決して本気で笑ったりはしない。
「行こうぜ…甲子園」
芯の強い瞳で優斗が言い放った。