戦国桜話


―葵side―


『そうか・・・小春は居なかったか・・・』


『はい・・・すみません・・・』


私は申し訳なさそうに下を向きながら呟く


太陽は既に姿を隠し、辺りはもうすぐ星が見える夜になろうとしていた


『あなたが謝る事じゃないだろう・・・さぁ、家に入ってくれ・・・晩ご飯だよ』


優しく微笑む村長さん・・・でも・・・笑顔の奥には切なさがある


私は胸が締め付けられる様な衝動に駆られた






小春ちゃん・・・・・・・・・






握り締めた拳からは悔しさが滲み出る






会いたいよ・・・・・・






『入りましょう・・・葵様・・・』


不意に私の顔を心配そうに覗き込んだ八神くん・・・・・・





・・・・・・また、心配を掛けちゃった・・・





私はぎゅっと目を閉じ、心を入れ替える





大丈夫・・・っ!


小春ちゃんはきっと見つかる・・・!


今、一番不安なのは小春ちゃんなんだ・・・・・・


私がこんな弱気でどうする・・・!!





私は一歩踏み出して、家の中に入ろうとした


私達は玄関の外で話していた為、夜風が冷たく吹き付ける


『さぁ、入ろう・・・!』


後ろに居る佐助達に言う為、私は振り返る


そして・・・言葉を発した瞬間に視線の先に見えたもの・・・・・・





時が止まる





風が止む





心の奥から・・・何かが吹き上げて来る・・・・・・





『小春っ・・・ちゃん・・・?』





ずっと会いたかった・・・・・・





本気で心配した・・・・・・





小春ちゃんが・・・今、そこに居る











< 134 / 177 >

この作品をシェア

pagetop