戦国桜話
第5章★
『やはり葵は旅を続ける・・・か』
大きな木の下で頭の後ろに手をやり、座りこんでいる男が呟く
その少年を見下ろす様な感じで赤い瞳の女が立つ
『そうみたいだな』
女はため息を漏らし、男から視線を外した
まるで葵が旅を続ける事を望んでいなかったかの様に・・・・・・
そんな女の思考を捕らえてか、男は徐に立ち上がり、女にニッコリと微笑んで口を開く
『何か不満・・・?蜜華』
『いや・・・別に、そんなんじゃねぇけど・・・』
実はものすごく不満だ
・・・という思考は薙ぎ払い、蜜華は男のなんとも言えぬ笑みの前に言葉を詰まらせながら否定した
男は特に興味は無いと言った様に「ふ〜ん・・・」と言いながら再び腰を下ろす
こいつは何を考えてるのか分からない・・・
それが蜜華の本心だ
『・・・にしても、』
何を言い出すのかと蜜華が首を傾げれば、男は指を鳴らした
すると何処からやって来たのか・・・さっきまでは妖気すら感じなかった鏡が男の横に現れた
『雅様・・・お呼びですか?』
凛とした声が響く・・・
『鏡・・・葵達の様子を見せてくれる?』
『かしこまりました・・・』
そう言って鏡はいつもの如く、手を前に差し出し、幻想鏡を取り出した
幻想鏡には笑いながらみんなと話をしている葵の姿が写しだされている
その隣には・・・つい最近、蜜華と刃を交えた男が木に寄り掛かっていた
本当に恐ろしい鏡だな