ようこそ! 魔破街へ
どうせそこまで親父はオレに気をかけてはいないだろう。

そう言うとムメイは俯き、しばし黙った。

「…お前はそれを聞いて、どうする?」

「変なことを聞くんですね。自分自身のことを知りたいと思って、何かおかしいですか? おかしいのはこの街の方です。オレは新参者として、知っておかなければならないことを、ただ知りたいだけです」

ただ屁理屈をこねているだけだとは分かっていた。

だけど苛立ちはどうやったって抑え切れない。

ロクな説明もされず、この異常な街へ押し込められた不満は、心の中でくすぶっている。

「心配しているなら、一つ約束します」

「約束?」

「ええ。全てを話してくれるのならば、オレは親父を一切恨みません」

「サマナ…」

「どんな理由があろうとも、それを受け止めるぐらいは大人です。だから話してください。あなたの知る、真実を―」

ムメイは眼を閉じ、唇を噛んだ。

そして長い沈黙の後、語り始めた。
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