ようこそ! 魔破街へ
オレも机の前のイスに座る。

「コクヤは生まれながらの覚醒者でね。彼自身、そのことを何とも思っていないからタチが悪い」

「人の精神を壊すことに快感を覚えるって言うけど…」

「そうだね。それはある意味、命を奪うよりも恐ろしいことだとボク達は思っている」

確かに肉体を殺されることより、心を殺される方が残酷な場合もある。

肉体の死は、心の死と直接つながる。

けれど心の死を迎えても、肉体が生き続ける限り、苦痛は続くのだから…。

「しかもコクヤはごく自然に、その力を振るってしまう。彼にとって人の心を殺すことは、食事をするぐらい自然で簡単なことなんだ」

「…それじゃあそういう部分を直そうとは思えないだろうな」

「だろうね。誰が何を言おうとも、彼は首を傾げるだけ。何が悪いのか、分かっていなんだよ」

彼にとって当たり前に自然過ぎて、それが悪いことなんて思いもしないんだろう。

―あるいは分かっていても、直せないのか。

それとも直さないのか。
< 75 / 138 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop