サルビアの妄言
突然の問い掛けに、僕は一瞬戸惑う。
「まだ、言ってないんです。」
急かすでもなく僕の返答を待つ朔春のお母さんは、そんな僕に優しい笑みを向ける。
朔春が死んだなんて、僕の気持ちもまだ落ち着いていないのに周君に易々と話せるわけがなかった。
話を聞いてしまった後の周君の辛そうな姿を見たくなくて、僕は話たくないと思った。
でも、早くこの事実を、現実を。
伝えてあげたいとも思う。
今だ、僕は複雑な気持ちでいた。
「簡単に話せる事ではないものね。」
「...はい。」
その事を、朔春のお母さんも分かってくれているようだ。
「冬樹君。ここに来て、朔春に挨拶してあげて?」
「....。」
そして、色々な考えや思いが頭を駆け巡る中、僕は、写真の朔春に挨拶をした。