サルビアの妄言
「冬樹さん?」
ふと俺が顔を上げると、表情がどこか曇り気味の冬樹さんがボーっとこっちを見ていた。
手には先程俺が渡した封筒。
やっぱり何かあったのだろうか。
「あ、あぁ周君。
急で悪いんだけど、僕明日からアメリカへ行ってくるよ。僕の友人からの急用でね、それまでの店番は頼んだよ?」
「...?はい。」
急用?アメリカ?
明日にでも行かなければいけないほどの急用なのか。
あぁ、ということはそれで冬樹さんはあんなに曇り気味な表情をしていたのか。
冬樹さんが店を空ける事なんてめったにないし、外国にもあまり行った事がないだろうし。
そうだ、多分きっとそうだろう。
どうやら俺の胸騒ぎは気のせいだったようだ。
それが分かると同時に、心の奥底でホッと肩を撫で下ろす自分がいた。