団☆乱ラン
...はずだった。
「そんな傷、ツバでもぬっときゃ治るって」
差し出したあたしの手を空中で止めたのは、隆兄の声で----
静君の手が空をかすって、だらんと下に落ちた。
「...」
「檸檬。そんなやつにかまってないで、あたしの手伝いをしてね!」
「あ、う、うん」
玄関に消えたはずのお姉ちゃんの声がして、漂うのは有無を言わせない黒オーラ。
「静君。ごめん、あたし行くね」
「...」
立ち上がったあたしに、無言の静君から、見上げるすがる様な視線が....。
後ろ髪を引かれる思いを断ち切った。
だって、我が家で母さんの次に従う相手といえば”花梨姉さん”だし。
その、お言葉を無視することは出来ない。
ごめんね。静君。
心の中で謝って、家へ飛び込んだ。