団☆乱ラン
――――――――…
「ふぁぁ…おはよう…檸檬」
「おはよう…」
あくびをしながら、お姉ちゃんがにっこりする。
「あら?美味しそう。も〜らいっ」
お姉ちゃんがつまみ上げたのは、父さんのお皿に乗っただし巻き卵。
「あ!お姉ちゃんの分はちゃんとあるのに――」
「いいんだよ、檸檬。父さんには父さんだけのスペシャルメニュー“納豆”があるからね」
「そうそう。父さんと言えば納豆。それがあれば大丈夫大丈夫」
「…」
そう言って、また父さんのお皿からだし巻きをつまみ出し、口に放り込んで、にっこりあたしに微笑む。
だけど、父さんは何事も無かったように、納豆をぐにぐにぐるぐるしていて―――
ま、いいか。
そう思った瞬間―
「やっぱり朝は納豆だな。この香りがいいんだよ」
父さんの、ご機嫌な声に目の前で食べていた隆兄が嫌みったらしく声をかけた。
「ああ臭い。遠慮して隣の部屋で食べようとか、そんな気はねぇんだよな、オヤジは?」
「そんな気の回る人格なら、家族はこんなに苦労しないだろ?」
「お!?静、珍しく意見が合ったな?」
「…」
何時ものように、始まった朝ご飯。
ラジオ体操を終えた朝の食卓は、本当に何時も通りなんだけど――
なんか、腑に落ちない。