団☆乱ラン
「…」
聞きたいことは山ほどあった。
確かに、あるんだけど…この場で聞くのは場違いな気がして
それに、キラキラ目を輝かせてあたしを見るお姉ちゃんの真意がつかめなくて……
「あ、えっと…うん。やっぱりいいや」
笑顔を作りながら、そう言っていた。
「え、あら、そう?いいの?ないの?──例えば、その………」
お姉ちゃんはそこまで言って、父さんをチラ見しながら、最後のだし巻きをつまみ取る。
「…檸檬だってもう高校生だし。このまま学校行ったってさ勉強頭に入んないんじゃないの?」
お姉ちゃんの声に、みんなが一斉に父さんを見た。
もちろん、あたしも。
からっぽになっただし巻きのお皿を眺めて、だし巻きを口に頬張るお姉ちゃんを見てため息を吐くと、
「…母さんの実家の事を檸檬が知らないのは、檸檬を騒動に巻き込みたくないから母さんと父さんがそう決めたんだよ」
「え…」
納豆をぐにぐにする手を休めずに父さんが呟いた。
「母さんには兄弟がいない。あの家の財産を狙って色々あったからなぁ…あれからだな、母さんが変わったのは……本当、最初出会った頃は大人しくて、綺麗で、女らしくて──優しくて───」
そう言って遠くを見ながら、ものすごく優しく微笑んだ。
────。
そこにいたみんなが息を飲んだ。
花梨お姉ちゃんに負けない程の、美しさだったから────。