団☆乱ラン


去っていった電車を見送った後、素知らぬ顔をして側のベンチに腰掛けた。


彼女は戻って来る。

そう確信があったからだ。


今まで僕の容姿を見て、顔を赤くしない異性には会った事が無かった。


僕がにこりと笑えば、相手は必ず僕の事をいい人だと思わずにはいられない──


人を惹きつける魅力的な“容姿”。


なんていったって僕は美しいから。


彼女だってきっと────


15分後。


向かいのホームに真っ赤な顔をした彼女が僕を見て立っていた。


立ち上がる僕。


僕を見つめる彼女。


まるで恋愛映画のワンシーンのように


恋に落ちる男女─────


僕は手に持った定期入れを彼女に見せて、にこりと微笑んだ。


途端、彼女がビクッと体を震わせた。


ああ、きっと彼女も恋に落ちたんだ。


そう確信した瞬間─────


「失礼致します。その定期入れお返し頂けますでしょうか?」


その声に振り返ると、黒服の立派な紳士が胸に片手をあて、ゆっくりとお辞儀を上げる所だった。




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