Short Lovers


「送ってくれてありがとう」


「いえ、じゃあ
 俺も帰ります。さよなら」



そっけない言葉と、優しさを含んだ声が不釣り合いで、なんだか可笑しい。

どうやらタイスケ君は、不器用な人らしい。



「待って!
 あの…ごめんね、
 変なこと頼んで」



一瞬キョトン、としたタイスケ君は、笑って答えた。



「ごめんって、まだ俺
 返事してないっすよ」


「っ」


恥ずかしくなったわたしは、お別れを告げて家に入った。

ほてった顔に、冷たくなった手を当てる。


タイスケ君はとても人を魅了する能力のある人だ。


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