月と太陽の事件簿10/争いの樹の下で
達郎はここ一週間で抱いたイメージとのギャップを、正直に口にした。

「あは、優等生やるのも楽じゃないからね。たまには息抜きしないと」

由美はそう言って髪を撫でた。

「貴裕は黒髪が好きだって言うんだけどね、思い切って染めてみたの。似合う?」

「よく似合ってますよ」

「へぇ。月見くんて、そういうお世辞、言えるんだ」

由美は嬉しそうに言い、そのまま達郎を上から下まで眺めた。

「だっさいトレーナーとか着てきたらどうしようかと思ったんだけどね」

達郎は白シャツに赤白のネクタイ、黒のカーディガンにジーンズという服装だった。

「まぁ合格ね♪」

由美は本気でデートのつもりらしい。

「事件の話は聞かせてもらえるんですか?」

達郎は確認の意味をこめて言った。

「せっかちねぇ。せっかくのデート日和なのに」

由美は空を仰ぎながら頬を膨らませた。

空は確かにその通りだったが、達郎の目的はデートではない。

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