月と太陽の事件簿10/争いの樹の下で
それに由美には、天堂という恋人がいる。

「今日、天堂先輩は?」

「ピアノの発表会よ。今ごろは御両親の熱い視線を受けてるんじゃないかしら?」

「佐伯先輩は行かなくていいんですか」

今さらと思いつつも、達郎は一応、訊いてみた。

「生理がしんどいからって断ったわ」

ものすごい理由だ。

「じゃ、行こ♪」

由美は声を弾ませながら、達郎の手を取った。

「どこへ?」

「事件の話を聞きたいんでしょ。まさか立ち話させる気?」

由美はカップルたちが集うベンチを指さした。

「2人で座って、ゆっくり話そ☆」

由美は達郎の手をひいてずんずん歩き出した。

『完全にペース握られてるな』

達郎は心の中で、小さくため息をついた。

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