月と太陽の事件簿10/争いの樹の下で
「じゃあどこから話そうか?」

ベンチに座ると同時に、由美は体をすり寄せながら達郎の顔をのぞき込んできた。

「その前にひとつ質問があります」

腰を浮かせて距離を取りながら達郎は言った。

確かめておきたいことがあったからだ。

「どうして僕にコンタクトを?」

兄の話から察するに、あのエリート4人組は捜査に非協力的だ。

それなのに4人組に近い人間が接触してきた。

なにか裏があってもおかしくはない。

ひょっとしたら由美はスパイしようとしているのかもしれない。

しかし由美は、達郎のそんな懸念を無視するかのように

「興味があったからよ」

と、飄々と言い切った。

「興味?」

「そ、興味」

「僕に?」

「知らないの?月見くんって結構有名なのよ」

由美は意外という顔をした。

「なにせ中間・期末とも試験成績は毎回学年トップ。しかも文系科目は常に満点」

「よくご存じで」

「兄は警視庁の刑事で、父親は副総監」

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