月と太陽の事件簿10/争いの樹の下で
あの女(ひと)登場
「まさかクレープとは思わなかったわ」
池のほとりのベンチ。
由美はイチゴクレープを手に、意外という顔をした。
「ホットドックの方が良かったですか?」
達郎の手にはチョコレートソースがたっぷりかかったバナナクレープ。
「達郎くんて大人びてるから甘い物とか食べないと思ってた」
達郎は大人びてると言われたことに戸惑いを覚えた。
「大人びてます?」
同年代にそう言われたのは初めてだった。
「たたずまいとか口調とか、そのへんがね」
もし自分が大人びてるとしたら、それは家庭環境のせいだろうなと、達郎は思った。
祖父や父は司法に携わる職業そのままの、堅い人間だし、祖母も厳格な人だ。
兄は明るい性格だが、年齢は一回り以上も離れている。
物心ついた時から、周囲は大人ばかりだった。
「あたし達郎くんみたいな大人な人が好きなのよね」
「先輩方は大人じゃないんですか?」
「あの連中は子供よ」
池のほとりのベンチ。
由美はイチゴクレープを手に、意外という顔をした。
「ホットドックの方が良かったですか?」
達郎の手にはチョコレートソースがたっぷりかかったバナナクレープ。
「達郎くんて大人びてるから甘い物とか食べないと思ってた」
達郎は大人びてると言われたことに戸惑いを覚えた。
「大人びてます?」
同年代にそう言われたのは初めてだった。
「たたずまいとか口調とか、そのへんがね」
もし自分が大人びてるとしたら、それは家庭環境のせいだろうなと、達郎は思った。
祖父や父は司法に携わる職業そのままの、堅い人間だし、祖母も厳格な人だ。
兄は明るい性格だが、年齢は一回り以上も離れている。
物心ついた時から、周囲は大人ばかりだった。
「あたし達郎くんみたいな大人な人が好きなのよね」
「先輩方は大人じゃないんですか?」
「あの連中は子供よ」