月と太陽の事件簿10/争いの樹の下で
「うちの母親の目だけじゃないわよ。姑の目もあるの」
姑とは、天堂の母のことだろう。
「あたし思うんだけど、父親の娘に対する感情より、母親の息子に対する感情の方が激しいわね」
天堂の母は会うたびに、息子にふさわしい相手かどうか、値踏みするような目で見てくるのだという。
「母親って時々ウザイと思わない?」
達郎はその質問に答えようがなかった。
なぜなら、達郎の母親はとうに亡くなっていたからだ。
母が亡くなったのは達郎が9歳の時。
母は病弱で、ずっと入退院を繰り返していた。
達郎には、ウザイと思うどころか、母親に甘えた記憶すら、ほとんどなかった。
「母親だったら、生きていてくれるだけでありがたいと思うけどね」
達郎は本心からそう言った。
「ふぅん」
そんな事情を知らない由美は、少し意外という顔をした。
「達郎くんのお母さんてどんな人なの?」
「もういないよ」
「え?」
「僕が小学生の時、病気で死んだ」
姑とは、天堂の母のことだろう。
「あたし思うんだけど、父親の娘に対する感情より、母親の息子に対する感情の方が激しいわね」
天堂の母は会うたびに、息子にふさわしい相手かどうか、値踏みするような目で見てくるのだという。
「母親って時々ウザイと思わない?」
達郎はその質問に答えようがなかった。
なぜなら、達郎の母親はとうに亡くなっていたからだ。
母が亡くなったのは達郎が9歳の時。
母は病弱で、ずっと入退院を繰り返していた。
達郎には、ウザイと思うどころか、母親に甘えた記憶すら、ほとんどなかった。
「母親だったら、生きていてくれるだけでありがたいと思うけどね」
達郎は本心からそう言った。
「ふぅん」
そんな事情を知らない由美は、少し意外という顔をした。
「達郎くんのお母さんてどんな人なの?」
「もういないよ」
「え?」
「僕が小学生の時、病気で死んだ」