月と太陽の事件簿10/争いの樹の下で
秀昭は笑みを浮かべながらテーブルに身を乗り出した。

「他のウェイトレスと話しているのを耳にしたんだがな…」

まるで内緒話をするように声をひそめる。

達郎は軽く身構えた。

「彼女はマヨネーズが嫌いなんだそうだ」

一瞬の静寂が達郎と秀昭の間をつないだ。

「…で?」

達郎のあきれ返った口調を気にする風もなく、秀昭は話を続ける。

「とは言え彼女はマヨネーズの味や匂い、食感が嫌いなわけじゃない。年頃になったある日、偶然に知ったある理由でマヨネーズが嫌いになったそうだ」

その理由を聞いて、秀昭は思わず感心した。

「そんな理由でマヨネーズ嫌いになることもあるんだなってな」

「それが問題?」

「それが問題だ」

不敵な笑みを浮かべながら秀昭はメニューを手にした。

「当てたら生クリームがたっぷりのったパンケーキおごってやる。この店の人気メニューだぞ」

「ご褒美はどうでもいいけどさ」

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