月と太陽の事件簿10/争いの樹の下で
「飲まなくていいんだよ兄さん!」

「いや、飲まなくていいのはお前だぞ?」

秀昭は手にしていたブラックコーヒーをかざした。

「オレは飲む気満々だぞ?」

「そうじゃないんだよ、兄さん!」

秀昭は自分に向けられた弟の視線を見て、再び驚いた。

母が亡くなって以来、どこか憂いが浮かぶようになったその瞳に、強い光が宿っていたからだ。

秀昭の目にはそれが、すべての真実を見抜かんとする強い意志に見えた。

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