月と太陽の事件簿10/争いの樹の下で
そう言いながらも、達郎の口もとは緩んでいた。

もちろん秀昭の発言は、達郎が大の甘党であることを踏まえてのものだ。

「まったく、呼び出されてなんだと思ったら、妙な問題を解けとはね」

達郎はそう言いながら唇を少し尖らせた。

別に兄の戯れに似た行動にあきれているわけではない。

それは達郎が考え事をする時の癖だった。

達郎は話題になったウェイトレスに目をやる。

その時偶然、彼女と目があった。

すると彼女はトレイを手にしたまま、達郎に向かって頭を下げた。

達郎はお辞儀を返すと、テーブルに肘をついて両手を顔の前で組んだ。

「兄さん…」

達郎は軽いため息をついた。

「僕の義姉さんになるかもしれない人は、普通に紹介してくれよ」

「な、なにを…!?」

達郎の言葉に、秀昭は目を丸くした。

「隠すことないよ」

達郎は軽く首を振った。

「あのウェイトレスさん兄さんの彼女だろ?」

達郎は自信と確信に満ちた口調で言った。

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