月と太陽の事件簿10/争いの樹の下で
「どどどどうしてそれを!?」

「兄さん『ど』が多すぎだよ」

狼狽する秀昭に、達郎は指を一本立てた。

「まず一つめは兄さんがアルマーニを着ていること。めかしこむってのは、それなりの相手に会うってことだよね」

まさか僕相手にアルマーニは着て来ないよねと達郎は笑った。

「二つめはウェイトレスさんが兄さんに注文を取りにこなかったこと。あらかじめそう言っておいたんだろ?」

「…彼女、オレの身内に会うからって緊張しててな。弟だから固くなることないって言ったんだが…」

秀昭と不自然なやり取りをして察せられないようにしたのだが、それが裏目に出た。

「結局は僕に向かって頭を下げちゃったしね。兄さんの…恋人の身内に対して失礼ないようにって、思わず出た仕草だったんだろうね」

礼儀正しい女性(ひと)だねと達郎が感心すると、秀昭は照れ臭そうに頭をかいた。

「最後に…」

「まだあるのか?」

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