電光石火×一騎当千
『電光石火』のカミナル。

時間を抜け出し刹那の瞬間に剣を振るえる彼女の神通力の前では、

いかなる刃も彼女に届かず、
いかなる達人も赤子同然。

相対してしまえば姿すら捉えられない無敵の力──

故に、文字通り瞬き一つの間に敵を斬り伏せる『電光石火』の称号を持つ。


「しかも、こんなに綺麗な女性だったなんて、素敵」

あの後、

タイホウが持ってきた荷物からいつもの服装に着替え、今の彼女は白と紫を基調としたコートを羽織り、腰に巻いた革のベルトに愛用の小太刀を差した格好だ。

流れるような長い黒髪は高い位置で一つにまとめ、一見小柄な美男子にも見える颯爽とした剣士の出で立ちだった。

そんな彼女を見つめるコハルの瞳が、
タイホウを見つめていた時よりも遙かに熱っぽい色を帯びていたことなど、この時の二人には気づく由もない。


「一人でさえ強いのに、こんな二つ名を持ってるお二人が組んで仕事をしてるなんて──まさに最強の二人組だ、ってもっぱらの噂ですよぅ!」


ちなみにこの二つ名というのは、ギルドが『剣術使い』に送る称号で、それぞれの神通力の特性を示した名だ。

剣術使いは大抵、本人の名ではなくこの二つ名のほうで呼ばれている。


「そんな有名人のお二人に助けてもらえるなんて、あたしってば超ラッキー?」

小花模様の桃色の着物の袖を揺らして、嬉しそうにはしゃぐコハルはまさに天真爛漫、純真無垢という形容がぴったり当てはまる。

無邪気な少女の笑顔を眺め、タイホウとカミナルはやや複雑な面持ちで顔を見合わせた。
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