電光石火×一騎当千
えーっと?



聞き間違いかな? と、大きな目を瞬かせたコハルに向かって、二人は胸を張ってこう続けた。



『つまり──

「彼氏」「彼女」

──を作るための旅だ』



………………。


「──って、ドップリ俗世煩悩まみれの浮つきまくった目的じゃないですかぃっ!!
色ボケか! 恋する乙女の旅か!」

少女の大声に驚いて、近くの梢からバサバサと鳥が逃げて行った。

く……下らねー!

あきれ返るコハルの前で、カミナルが再び心外そうに憤慨した。


「失敬な! この世でただ一人の私だけの運命の相手を見つけるという高尚な目的の、どこが浮ついていると言うのだ」


どこからどう考えても浮つきまくりの目的に相違なかった。

しかも言っている内容は「白馬に乗った殿方がいつか私を迎えに来て下さるに違いないわ」などと抜かしている、十代前半の小娘と大差ない。

違いと言えば単に、迎えに来てくれるのを待つのではなく、自ら探しに旅に出たという点のみだ。


完璧なる色ボケした恋する乙女の旅だった。


「……タイホウさんもですか?」

「んー? 俺はまあ、抱いた女の数が三桁超えたあたりから、そろそろ身を固めたいなーと思ってね。

こんな俺でも一生ついて来てくれる、理想の女の子を探して旅しているというワケだ」


いねーよ、そんな理想の女。

喉元まで出かかった言葉をコハルは何とか呑み込んだ。


どうやらこちらは色ボケどころか、とんでもない色狂い──もとい色魔のようだった。


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