電光石火×一騎当千
「あ、そうだ」

『剣術使い』に抱いていたストイックな幻想が粉々に砕けていくのを感じつつ、それでもコハルは二人に笑顔を見せた。

「この先にある城下町で、殿様がお触れを出してるの知ってる?」

敬語ではなくなっている辺りに、尊敬の感情の急降下が窺える。

「お触れ?」

カミナルが尋ねた。

「うん。山賊たちが話してたんだけどね、

この辺りを治めるお殿様の一人娘が悪い妖術使いにさらわれちゃったらしくて──、

妖術使いを討伐してお姫様を助け出せる強者を探してるみたいだよ」

「うわあ……ベッタベタのよくある話だな」

タイホウが興味なさそうに言った。


「うん、まあね。でも姫を助け出した者には、褒美としてお姫様との結婚が認められるんだって」

「何ィ!? マジか」

タイホウは途端に話に食いついた。


「二人くらい強かったら楽勝かもって思って。
もちろん賞金も支払われるみたいだけど、身を固めたいんなら、タイホウさんちょうど良いんじゃないかな」

「おお! まさに渡りに船じゃねえか」

「千載一遇だな」

カミナルもこれには好意的な様子で、二人は口々にそんなことを言った。
< 21 / 46 >

この作品をシェア

pagetop