電光石火×一騎当千
侍座を立ち去る時、出入り口にある立て札を見ると、確かにコハルの言う触れ書きが張り出されていた。

「ふーん。

『妖術師の手から姫を救い出した者には金五百両』

『望めば姫との婚儀を認める』

……金額もさすがに悪くない。
確かにこれは我々にとって一石二鳥だな、タイホウ」

カミナルが言って、タイホウが頷いた。



二人が侍座を出ると、コハルが宿を探して待っていた。

助けた以上、お金のないコハルをこのまま放り出すわけにもいかなかったので、料金はカミナルとタイホウ持ちで三人はとりあえず同じ旅籠に泊まることに決めたのだ。

コハルの身の振り方はゆっくり考えるとして、荷物を部屋に置き、三人は旅籠の一階にある飯屋で揃って夕食をとる。

「彼氏と彼女って──あの、二人はお互いでは駄目なのかな?」

運ばれてきた定食を食べながら、コハルは二人の旅の目的を思い出して訊いてみた。

色んな意味でお似合いのような気もしたけれど。


「論外だ」
「無理だ」


間髪入れずにカミナルとタイホウが即答した。

「そっ……そおなんだ」

妙な迫力に気圧されて、二人と向かい合って座っていたコハルはやや身を引く。

カミナルは心底嫌そうな顔で、

「有り得ないことを言うな。私が恋人にする相手は、私が心から認めた男だけだ」

「え? でも、カミナルさんも、タイホウさんのことは認めてるんじゃないの?」

「腕は認めてる」

カミナルはそう言った後、横目でタイホウに氷のような侮蔑の視線を送った。

「だが男としては断じて認めてないぞ、こんな見境のない奴。
最低の男だと思っている」

「な、無理だろこんな相手。
今日も含めて一応これまで何百回も口説いてみたが、このつれなさだ」

うわあ……成る程。

確かにこれは駄目っぽいと、コハルはもの凄く納得した。

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