電光石火×一騎当千
タイホウが先に部屋へと引き上げてゆき、女二人きりになったところで、

コハルは静かに杯を傾けているカミナルをしげしげと見つめた。


濡れたようなつやを持つ漆黒の髪、長い睫毛の下で灯火を映す夜色の瞳。

こうやって、明かりの下で見ても──カミナルは剣客の格好をさせておくのがもったいない程の、本当にいい女だ。

着飾ったらさぞかし見栄えがするだろう。


「ねえ、さっきはタイホウさんの前であんなこと言ってたけど」

コハルはカミナルの白い顔を覗き込む。

「本当のところ、どうなの? タイホウさんのこと、どう思ってるわけ?」

カミナルは怪訝そうな顔をした。

「言ったとおりだが? 他に何がある?」

「……じゃあさ、なに? 本っ気で、ずっと二人きりで一緒に旅してるのに、タイホウさんのことは何とも思ってないの?」

理解できないといった様子のコハルに、カミナルは「当たり前だ」と相変わらずの淡泊な答えを返した。


「ふうん? だったら……」

コハルは悪戯っぽい──
いや、悪戯っぽいというよりは

これまでの彼女には妙に似つかわしくない──
艶っぽい『女の表情』を浮かべた。

「あたしがもらっちゃおっかな、タイホウさん」


カミナルは唖然としながら顔を上げて、少女の顔を見た。


「タイホウさんってカッコイイよねー。
男らしくて頼りがいもありそうだし、優しくしてくれるし。
顔立ちも素敵で、あたしの好み。

いいのかな、このままあたしが彼の部屋に行っても?」
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