電光石火×一騎当千
「コハルは、二年前の──ビンゴの国の魔王征伐の戦は知ってるか?」
「知らなあい」
「知らないのかよ!」
タイホウはがくっとした。
「結構な大戦(おおいくさ)だったと思うんだが」
「だって、戦なんて年中あっちこっちで起きてるんだもの。イチイチどこで何が起こってるかなんて知らないよ」
それもそうかとタイホウは納得する。
それにしても二年前のこの戦は趣を異にしていたのだが。
何しろ、戦の相手というのが──
「近隣の人間の国と、魔界よりヤマトの地に君臨しようとした『神野悪五郎』率いる妖怪勢との戦いだぞ。当時はかなり騒がれたと思うんだが」
「神野悪五郎? 誰?」
タイホウは再びがくっとした。
「え? 有名人? ──って、あれ? 『漢字』の名前!?」
コハルはようやく気づいたように声を上げた。
ヤマトの地では、人の名は片仮名である。
もちろん、カミナルやタイホウにも漢字の本名はある。あるが、誰もそれは名乗らない。
漢字の本名を『忌み名』と言う。
普通の人間が他人からこの本名を呼ばれると、呼ばれた相手から支配を受け、生殺与奪を握られることになってしまうのだ。
だから普段は、タイホウとかコハルとか……こういう字(あざな)を名乗る。
己の漢字の名を平然と名乗れる者は、それだけで人智を超越した存在なのである。
「ってことは、『神野悪五郎』っていうのは……」
「だから魔界の王の一人だって! 魔王だよ魔王!
別の魔王『山本五郎左衛門』と覇権争いをしてる、人外悪鬼魑魅魍魎を統べる魔物の王だ」
そんな奴がヤマトの地に顕現したというのは、
二十年前の第六天魔王『織田信長』の復活降臨事件以来の大事件だった。
「それで近隣諸国より征伐軍がさし向けられて、大戦になったんだが──」
その中に、傭兵として雇われたタイホウとカミナルもいたのだ。
「知らなあい」
「知らないのかよ!」
タイホウはがくっとした。
「結構な大戦(おおいくさ)だったと思うんだが」
「だって、戦なんて年中あっちこっちで起きてるんだもの。イチイチどこで何が起こってるかなんて知らないよ」
それもそうかとタイホウは納得する。
それにしても二年前のこの戦は趣を異にしていたのだが。
何しろ、戦の相手というのが──
「近隣の人間の国と、魔界よりヤマトの地に君臨しようとした『神野悪五郎』率いる妖怪勢との戦いだぞ。当時はかなり騒がれたと思うんだが」
「神野悪五郎? 誰?」
タイホウは再びがくっとした。
「え? 有名人? ──って、あれ? 『漢字』の名前!?」
コハルはようやく気づいたように声を上げた。
ヤマトの地では、人の名は片仮名である。
もちろん、カミナルやタイホウにも漢字の本名はある。あるが、誰もそれは名乗らない。
漢字の本名を『忌み名』と言う。
普通の人間が他人からこの本名を呼ばれると、呼ばれた相手から支配を受け、生殺与奪を握られることになってしまうのだ。
だから普段は、タイホウとかコハルとか……こういう字(あざな)を名乗る。
己の漢字の名を平然と名乗れる者は、それだけで人智を超越した存在なのである。
「ってことは、『神野悪五郎』っていうのは……」
「だから魔界の王の一人だって! 魔王だよ魔王!
別の魔王『山本五郎左衛門』と覇権争いをしてる、人外悪鬼魑魅魍魎を統べる魔物の王だ」
そんな奴がヤマトの地に顕現したというのは、
二十年前の第六天魔王『織田信長』の復活降臨事件以来の大事件だった。
「それで近隣諸国より征伐軍がさし向けられて、大戦になったんだが──」
その中に、傭兵として雇われたタイホウとカミナルもいたのだ。