電光石火×一騎当千
こんな無意味な勝負なんかやめましょうよと、何とか説得しようとするジンヤを見届け人として無理矢理立ち会わせて、

人気がなくなり、兵どもが夢の跡といった様子の葦原を横目に、乾いた大地の野でタイホウとカミナルは対峙した。


「死ぬぞ」

冷ややかに言うカミナルをタイホウは赤い瞳で睨み据えた。

「カミナルさんの言うとおりですよ。本当に死にますってば」

横ではジンヤがなおも必死に止めようとしている。

「別に誰も、タイホウさんが弱いなんて思ってないですよ。ただ、カミナルさんの神通力とでは相性が悪いんですよう」

うるさい、黙れ。

タイホウは無視して瞳に金の炎を灯す。
それを見たカミナルもまた、瞳を紫に輝かせた。

「うわあ」と、ジンヤが頭を抱えた。


「なんて馬鹿な。ったく、『韋駄天』の神通力に『鬼神』の神通力で挑んでも無駄だというのに。
人と融合して自我を失い、純粋な観念的存在となる以前の太古でさえ、鬼神というのは韋駄天に追いつかれとるのにさ」


『────!?』


タイホウとカミナルは、思わずジンヤを振り返った。


「お、無駄な勝負はやめる気になった? タイホウさん」

ジンヤは、相変わらず目を糸のように細めてニコニコと笑みを浮かべていた。

これといって特徴が見当たらない、「人の意識に全く残らず」一たび目を離せば何故か「頭の中で思い描くことが不可能」な──その若者の顔を、タイホウは穴が空くほど見つめた。


「ジンヤ……てめえはいったい──?」
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