電光石火×一騎当千
「な!?」


ぎょっとしたタイホウとカミナルが目を見開いて見つめる前で、


若者の特徴のない散切りの黒髪は、紫水晶のような色のつやを帯び、

縦に瞳孔の割れた銀色の瞳は、光の加減で虹色に光って見え、

袴に小袖という侍の格好に身を包んだその背からは
しゅるしゅると、孔雀の羽のような美しい模様の入った四枚の漆黒の翼が伸びて、

全身の肌から血の気が完全に失せ、陶器でできた作り物の人形のような真っ白な顔を──


妖しくも美しい魔物の王は、笑みの形に歪めた。



タイホウは彼の名乗っていた名前を思い浮かべる。

ジンヤ……

ジン、ヤ……神、野……シン、ノ

──神野か!?



伸びきった巨大な夜色の翼では、無数の銀の目玉が一斉にぎょろりと開いてこちらを向く。それをタイホウはぼう然と眺めて、


カミナルの姿が消えた。


一瞬で、魔王神野悪五郎の真ん前に移動し、その心臓に手にした小太刀を突き立てる。


──が。


バキン、という音を立て、小枝のようにカミナルの小太刀は折れ飛んだ。


「残念だねェ。韋駄天の神通力があっても、武器がそれじゃあ俺は殺せんよ」


にたにたと、白い顔は笑みを濃くして

その腰の二本差しに白い手が伸びる。


魔王神野はすらりと刀を抜いてカミナルの体を刺し貫いた。


「カミナルッ!」

タイホウが叫び──

「斬れ!」

神野に貫かれたまま、魔王の腕を握ってカミナルが怒鳴った。

「私ごと、貴様の神通力でこいつを斬れ!」
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