恋恋【短】
「冷たい…。」
未來はいつか見た白いシンプルなワンピースに薄手のカーディガンを羽織っていた。
寒くないのか?
耳元でそう言うと未來はただ静かに微笑んだ。
『上がっていい?』
少し体を離されたと思えば上目使いでそんなこと言ってくる。
んなの、いいに決まっているのに。
そう思いながら俺は未來を招き入れた。
『はは、前より散らかってる。』
クスクスと笑いながら部屋を見渡され、少し恥ずかしくなった。
「…うっせ。」
悔し紛れに吐いた言葉に未來は
『楓はあたしが居ないと駄目だね。』
少し悲しげにそう言った。
……。
「…あぁ。駄目だよ、俺は。」
本当に、駄目だ。
お前が傍に居ないと。
あっさり認めた俺に未來は何も言わない。
ただ、少しだけ困ったように眉を下げただけだった。
『わぁ…、懐かしいね。』
未來は話題を変えるように卓上の写真立てを手にとった。
「そうだな。」
写真の中で微笑む俺とお前。
いつだったか、ふたりで海にいったときの写真だった。
『飾ってくれてるんだ。』
嬉しい。
そう言って笑う未來が愛しくてたまらない。
めちゃくちゃ好きだ。
めちゃくちゃ愛してる。
そんな想いも込め、俺は後ろから未來を抱き締めた。