愛なんて簡単に語るな
 雪平と雪平の男友達、それにクラスの女子にあたしと芹香を交え、計8人で近場のカラオケ店に入った。
 雪平が裏でなにかしら話したのかもしれない。しんみりとしたバラードは誰も流さず、始終テンポの早い曲で室内を盛り上げてくれた。
 その心遣いが嬉しくて、苦しい。
 せめてこの場では笑わなきゃ、と思うのに、胸の奥の空虚さが笑顔をつくることの邪魔をした。
 あたしはなにをやってるんだろう。一番つらいときに、周りにまで気を配る余裕なんてあたしにはない。
 みんなと混じって楽しそうに合いの手を入れる芹香の肩を叩き、そっと耳打ちした。
「ごめん。やっぱりあたし帰るね」
 芹香は静かに頷いてくれた。
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