愛なんて簡単に語るな
 あのねえ、と彼女はなにか言おうとして、やめた。代わりにがっくりと肩を落とす。なにを言っても無駄だろうとあたしの態度から判断したらしい。
 頭を掻きながらなにやら考えている。あたしには関係のないことだ。まだ帰る気なんてさらさらないのだから。
 しかし彼女は思いがけない提案をした。
「じゃあ、私の家に来る?」
「へっ」
 驚きのあまり妙な声が出る。
 からかわれているのかと思ったのだが、平然と視線を投げ掛けてくる彼女は冗談を言っているようには見えない。
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