愛なんて簡単に語るな
 多分、嫌われているわけではなく、これが彼女の性格なのだ。出会った当初からさっぱりを通り越してドライな印象が強かったが、なんだかんだで彼女は面倒見の良い人間だ。いまだってこうしてあたしの話を聞く態勢を取ってくれている。
 だから彼女が大した相槌を打ってくれなくても、あたしは気にすることなく最後まで話すことにした。
 陽くんと仲良くなったきっかけ、観覧車での告白、自分の誕生日を祝ってもらうはずだったのに他の女と浮気をしていたこと。ただ、すごくすごく好きだったということも。
 どうしてこうなっちゃったんだろう。どうしてこんな終わり方をしたんだろう。
 惨めでつらくて悲しくて、けれどもいまだに彼の笑顔を想うと疼く胸に、無意識に眼球が潤んでいく。涙も渇れ果てる、なんて表現は嘘だと思った。
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