愛なんて簡単に語るな
 浮気するような男は別れて正解だとか、そんな男は早く忘れるべきだとか、友人たちに言われた言葉からびっくりするくらいかけ離れている。
 返す台詞が見つからない。
 呆然とするあたしをよそに、彼女の鋭い発言が次々に襲いかかってくる。
「浮気されたから離れようって思うのは、浮気をされて傷ついた自分が可哀想だからじゃないの。どうしようもなく好きって本当に言える相手なら、どんなに傷つこうが浮気程度じゃ自分から離れたりしないね、私は」
 尖ったナイフであたしの心をザクザクと切り裂きながら先へ進む彼女は、容赦などしてくれる気配もない。
 似たようなことを他の誰かに言われたら泣き叫んで逆上しそうなものだけど、彼女があまりに整然としているので取り乱すことすらできなかった。
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