天国の窓
奇跡
二か月が経ちました。
貴也は
いつものように、
仕事から帰ると、
いつものように、
部屋で
テレビを見ながら
くつろいでいました。
「貴也―っ、
電話よーっ。」
母の道子が
下の階から、
大声で貴也を呼びました。
電話の先は、
看護婦の
恵美子からでした。
「どうも…、
お久し振りです。」
「貴也君、
あのね、
聞いて驚かないでね。
奇跡が起きたのよ。」
恵美子は
興奮気味で話しました。
「“魔法の窓”
なんだけど、
ここ最近、
心臓の悪い女の子に
貸していたんだけどね。」
恵美子は、
更に興奮しているのか、
鼻息が
受話器の向こうから
聞こえる程です。
「その子、
五日前、
意識無くなっちゃって、
緊急手術する事に
なってね。
手術は
成功したんだけど、
あとは、
本人の頑張り次第で
意識を
取り戻せるかどうか、
ずっと生と死の
境をさまよっていたのよ。」