粉雪-3年後のクリスマス-
 オレたちが付き合い始めた日も、これくらい寒い日だった。


寒さと照れで頬を赤らめたカノジョだったのに。

ついさっき、新しい彼氏と一緒に去った。



 終わりは呆気ない。

そもそも始まりからして、俺の情けなさがひきたつのだけれども。


「…はぁーっ、情けない……」


 カノジョの気持ちもわかっている。

三年も付き合えば、自然とそうなってくる。



 付き合って二年ほど経ったころだろうか。

一人暮らしをしているカノジョの家で、俺はいつものように部屋着を着てTVを見ていた。

飲み会だから遅くなる、と連絡は受けていたし、いたって普通に過ごしていたときだ。


 そんなに夜も遅くならないうちにカノジョは帰宅し、少し派手な化粧のまま、飛びつくように抱きついてきた。


「ユキ、職場の先輩が寿退社しちゃったの!」


 それはどこか興奮気味で、嬉しそうな声音。

猫のように「そっか」と頭をなでてやることしかできなかった。


けれどカノジョはパッと見上げてきて、爛々と瞳を輝かせる。


「営業部の年下の新人くんとわずか一年でだよ!?…先輩、すごすぎだよねっ」


 なんとなく──比べているのかな?

妙なプレッシャーに、俺はむず痒くなってしまって。


「そりゃ、すごいね。俺には無理だな」


 つぶやいた瞬間、カノジョの少し不満そうな表情。

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