粉雪-3年後のクリスマス-
 …──死んだ?


「私たちも詳しくはわからないけど、結構大学内では噂になったよ」

「でもさ、小中くんって結構暗いカンジだったよね」


 ──じゃあ、彼女が待つのは“誰”になるんだ。


「おい、ユキ……」

 真っ白の頭になった俺の肩をつかんだ同期。

その顔ははっきり見えているはずなのに、急に歪んだ。


「ユキ……なんで、泣くんだよ…」


 言われて気づいた。

頬には、情けなくも流れた涙。


 どこの誰だかわからない『彼』は、もういないらしい。

そんなことを全く想定していなかった俺は、心と頭の回線が切れてしまったようだ。


「わ、悪い…ごめん、変な話して……」

 しんとする場に、なんとか盛り上げたかったのだけど。

うまくいかない。



「ユキっ!」

 急に大きな声で呼ばれ、肩を震わせた。

店中の視線をかき集めながら、俺はゆっくり同期の顔を見上げた。


じっと見つめる真剣な視線。


「……いってこいよ…」


 何も聞かない同期は、ただ優しく、笑った。


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