【完】晴 時々 雨
「ちょっと、痛いってば。
わかったから、とりあえず放して」
わざと顔をしかめると
手の力は緩めてくれたけれど
決して放そうとしない
面倒なことになりそうだ
居酒屋にでも入れば気が済むだろうか
嫌々ながら付き合おうと思った時だった
「おい、放せよ、酔っ払い」
まだ子どもみたいな声が近くで聞こえて
オジサンの腕に
手がかけられているのが目に入った
絡まれているところを助けられたはいいが
代わりに付き合う羽目になるというのも
よくあること
どっちにしても
面倒な事態には変わりない
それでもオジサンよりは
若い男の子の方が何かと楽だ
その勇敢な少年の顔を拝もうと
視線を移す
あたしと同じ目線に
あどけない
けれど冷たい目をした
反抗的な男の子の顔があった
「てめぇみてーなヤツ見てると
胸クソ悪ぃんだよ!」
そう言い放つやいなや
オジサンが吹っ飛んで行った
オジサンは自分の左頬を押さえながら
這うようにして逃げていく
少年に殴られたのだと
少し遅れて気付いた