「さようなら。」は桜いろ
と考えながら、美術教室へ入った。
早紀は席につくと辺りを見回した。
早紀は美術室の雰囲気が好きだった。

他の教室には無い、独特な雰囲気が、他の教室よりも時間の流れがゆっくり流れている気がしてならなかった。

その日は、1時間目も2時間目も、授業とは言っても自己紹介等をおり混ぜたレクリエーションだった。

(美術もそうなのかな。)

と早紀は内心、憂鬱だった。
美術の教師が入って来ると軽い自己紹介の後、

「では出席を取りながら、皆さんに鏡を配りますので今日は自画像を描いてください。」
と言うなり出席を取り始めた。

早紀は先程からの授業が退屈だった為、安堵した。
1時間しか時間が無い為それなりの描きあげに仕上げた早紀は時計を見ると、まだ10分程時間が残っていた。

早紀は癖の、教室の外を見ようとした。
すると、窓際の席に翼が居た。
他の生徒は隣の生徒と喋りながら描いていたのにも関わらず、翼はただ黙々と自画像を描いていた。
早紀はなんとなく翼を見ていたのだが、翼も絵を描きあげたのか、早紀の視線に気付き、軽く手を挙げ、振った。
早紀はなんとなく恥ずかしくなり、翼から目を逸らした。
< 18 / 34 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop