「さようなら。」は桜いろ

早紀は歩きながら教室へと向かっていると、バタバタと忙しく翼が、教室から出てきた。
小脇に体育着の入った袋を抱えながら、体育館へ向かう翼は早紀に

「じゃあ、また後で！なんだったら、一緒に帰ろう！」
と走り去り際に早紀に言い、走り去った。

「帰りは、絵美と帰るんだけど…」
と早紀が翼の方を振り向き、言った頃には、翼はとうに声の届かない程遠くに居た。


体育の授業が始まり、やはり教師への軽い、自己紹介の後、その日は体力測定を行った。
元々、運動はあまり得意では無い早紀は気を抜き、絵美と喋りながらでも過ごそうと思っていたが、絵美の方を向くと、前の特殊教科の時間に仲良くなったのであろう、絵美は他の生徒と談笑している。

妙な孤独感にさいなまれた早紀は、同じく、体育館で授業を行っている男子側に、ふと目をやる。
女子側よりも、騒がしく測定をしている男子の中、やはり翼は一人、黙々と体力測定をこなしていた。

前屈、上体起こし、段差昇降をこなし脈を計る時、知らない生徒が早紀の腕を触る。
その瞬間、早紀は何とも言えない嫌悪感にさいなまれた。
どうも他人に触れられる感触と言う物は好きになれない。