「さようなら。」は桜いろ
「早紀、今日なんか予定ある?」
絵美がにこやかに問いかけた。
早紀は先程までの懸念が思い過ごしであった、と安堵した。
おそらく絵美の問いかけは、(今日もどこかへ行こう)と言う誘いであると、解ってはいたが

「用事?無いよ。どうして?」
と呼吸を合わせた。
しかし、絵美の口から出た言葉は

「ウチ今から真奈美達と遊びに行くんだけど、早紀も来る?」

一度は引き揚げられた早紀の思いも、また一気に突き落とされた気分だった。
大袈裟に聞こえるが、実際早紀には、早紀の日々の生活の中で、どれだけ絵美という存在が重きを為しているかを思えばそれほどの事なのかも知れない。

真奈美達、おそらくは体育の授業中、絵美と仲良さげに談笑していた子達だろう。
とても印象の良い連中ではあったが、早紀にとってはやはり知らない人であり、また他人なのだから、

「うーん、いいや、遠慮しとく。」
と絵美に言うしか無かった。
絵美は残念そうに

「そっか、わかった。じゃあ、またその内にね。」
そう言うと真奈美達と教室を出ていった。

その内、やはり高校生活をおくっていれば、知り合いが出来る。
当然の事。
絵美も例外ではなく、現に今日がそうだ。
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