「さようなら。」は桜いろ

翼との間に隙間を作った。
ずっと押し黙ったままの気まずい時間に早紀は困っていた。

やがて電車がある駅で停まると、翼が口を開く

「俺んち、この駅だから。じゃあ、また明日。」

と言って電車を降りた。
早紀はふぅ、と溜め息を一つし、次の駅で降りた。

家に着き、昼食を済ませ、その日もまた、いつもと変わらない夜。

早紀は床に着くと、その日は翼の事を考えていた。

(何故あんな言い方をしてしまったんだろう。)

いや、何故なのかは解っていた。
言い知れぬ話し易さ、自分の饒舌さに驚き、動揺を隠しきれず、おそらくはあんな言動に至ったのだろう、と。

「明日から、気まずいなぁ。」
と早紀は独り言を言うと、静かに寝息を立て始めた。