「さようなら。」は桜いろ
第三章 4月8日
翌日、気が重たいながらも絵美と登校した早紀は、教室に入ると大人しく自分の席についた。

ややもして、教室に翼が入って来ると

「よう。」
と早紀に軽く手を振った。
昨日、あんな別れ方をしたのに、と早紀は肩透かしをくらい、拍子抜けした。
翼は自分の席に鞄を置くと早紀に近づき

「おまえ、何で電車の中で鞄持ち上げてるの?」
と笑いながら聞いた。

「別に良いじゃん。それにおまえって呼ばないでよ。」
「じゃあ、何て呼べば良い?」
「好きに呼べば。」
「じゃあ…、さきって呼んで良いか?」
「だから、好きに呼べば良いよ。」
そんな二人のやり取りを見た絵美は

「朝から仲良いね。」
とまたも茶化し始めたので早紀は

「もう、絵美もしつこいよ。」
と否定した。
翼はというと、ただ黙って手を横に振り、(違う)と否定するだけだった。

そうこうしている内に、真奈美や他の生徒も登校し、絵美に近づき

「絵美おはよー。あ、早速着けてんだ。」
と言うと、絵美の携帯電話を手に取った。
早紀は何気なく真奈美の手元に目をやると、そこに絵美の携帯には見慣れないストラップが着いていた。

「うん、着けたよー。真奈美は?」
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