「さようなら。」は桜いろ
「もし暇なら、これからどっか行かない?」
と突然早紀に言った。
あまりに突然の誘いだった。
早紀は今まで異性とあまり接点が無かった為、非常に困惑した。

しかし、あまりに翼の催促が激しかった為、仕方なく了承した。

翼の言うどっかとは一体どこなのか。
おそらくは早紀の友人と行く様な所と、そう変わらないとは思ってはいたが、早紀は

「どっかって、どこ?」
と翼に問いかけた。

「え?うーん、考えて無かったな。うーん、少し考えながら歩こうか。」

と翼が言ったので、早紀が着いていく形となった。
いつもは駅まで真っ直ぐ向かってはいたが、駅には行かず、見慣れない町風景の中、二人は歩く。
あまりにも翼が何も言わない為、早紀は痺れを切らした様に

「どっか行くなら、どこでも良いよ?私お金無いから、そんなに高い所は行けないけど。」
と言うなり翼が

「え?あぁ、俺も貧乏だから、高い所は無理。」
と笑っている。
そこに、道路を一本挟んだ所にファーストフード店を見付けた翼が

「じゃあ、あそこにしようか。」
と言って店を指差す。
早紀も黙って頷き、二人はファーストフード店へ入った。
二人ともドリンクだけ注文し店内の椅子に座った。
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