「さようなら。」は桜いろ
一人きりでの登校、早紀は駅改札を出ると、学校へ真っ直ぐ向かった。
途中、絵美や真奈美と通っている頃には気付かなかった景色があった。
公園や交番、大きな樹木。

早紀は何気なく目を奪われていると

「おーい、おーい、早紀いー。」
と翼が走って来た。
翼が早紀に追い付くと、軽く(おはよう)と言い、歩き始めた。
翼は歩み始めたが、早紀は止まったままだった。
早紀の様子に翼が気付き、振り返り言った。

「どうした?遅刻しちゃうよ?」
いつも通りの、明るい笑顔で早紀に問い掛けた。

翼のといかけとは裏腹に、早紀の心内は穏やかでは無かった。

あの日もそう、翼とは会話が面白い程弾んだ。
周りから見れば普通の、どこにでもある様な会話のペースだったかも知れない。
しかし早紀にとっては、異性である事と、今までの他人と自分、という境界線が、翼の前では無くなっていた。

こうした恐ろしい程の自然体が、絵美への罪悪感を倍増させてしまっていた。

とはいえ、学校に遅刻してはいけない。というのもまた、現実である為、早紀は黙って頷き、歩みを進めた。

コンビニエンスのある角の、横断歩道に差し掛かった頃、信号待ちしていた二人に後ろから
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