さよならの後に
―3年前 秋

「俺、最悪だな・・・」


奏は、腕の骨を折った

大切な大切な都大会前だった

エースの奏がいない試合は、チームにとっても痛かった

「俺さ、L.Aに野球留学、決まってたかもしれねぇんだ。

怪我さえしなければ、俺が行けたのに・・・」


「・・・行きたかった・・・」


奏の涙を見たのはこの日が初めてだった

私は奏に、何かを言ったわけじゃなかった

そんな軽々しく言葉にできない感情だったから

・・・言葉にできない感情だったから


奏を見ないで、まっすぐ空を見た

奏を見てしまうと、押さえている涙があふれてきてしまいそうだったから


その日の空は、すごくきれいな青空だった

でも、生まれて初めて、こんなにきれいな青空を憎んだ

どうせなら、雨が降って、奏の思いまで全部、全部

流されてしまえばいいのにって・・・


本気で思った


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