【クリスマス短編-2009-】クリスマス∞ドール。
「でも、どうしましょうか」
ほっと胸を撫で下ろしていると、困った表情を浮かべる松田さん。
「これからバッグを探すにも、こう暗くちゃ至難の技ですし。かといって、あなたを警察に送るだけじゃあとが心配ですし・・・・」
う〜んと唸りながら、一番いい方法を考え出そうとしている。
見ず知らずの人に話しかけるところからして、松田さんはなんてお人好しなんだろう。
まして、一緒に探そうとしてくれたり、警察に付き添おうとしてくれたり・・・・。
「あ、あの、わたし・・・・」
「はい?」
“もう十分です”と頭を下げて、ここから立ち去ろうと思った。
なくすバッグもないし、警察に行ったってまた嘘をつくだけ。
1日くらいなんとかなる、松田さんにはこれ以上迷惑をかけられないもの・・・・。
そうして、わたしはぐっと拳を握って一歩後ろに下がった。
松田さんは手を顎に置いて、穏やかな表情でわたしを見ている。
さぁ、言うのよ、わたし。
“もう十分です”って。
けれど───・・。