【クリスマス短編-2009-】クリスマス∞ドール。
◆メリークリスマス
◇◇◇
松田さんに手を引かれ、着いたところはショップの前。
ここから探すつもりみたい。
「昨日はどこを歩きました? バッグをなくしたことに気づいたのはいつでしょう?」
「えーっと・・・・」
生まれて初めて誰かと手をつなげたこと・・・・というか、愛しの松田さんと手をつなげた感動もどこへやら。
わたしは返答に困ってしまった。
だって・・・・ね。
わたしは今日だけ人間にしてもらったドールだから。
探すバッグなんて最初からない。
「覚えて・・・・ませんか?」
わたしはコクリと頷く。
「参ったなぁ。そうですか・・・・」
「ごめんなさい。ここまで来て」
「いえ。じゃあ、思い出すまで適当に探しましょう。時間はたっぷりありますから」
「・・・・はい」
本当にごめんなさい。昨日からわたし、絶対にどうかしてる・・・・。
どうしてあのとき、もういいですって言わなかったんだろう。
松田さんと一緒にいたいばっかりに、最初につくべき嘘をつかないでしまった。