【クリスマス短編-2009-】クリスマス∞ドール。
嘘をつき続けなきゃいけないのなら、わたしはもうドールに戻る。
胸が痛くて痛くて仕方がないの。
真ん中がすごくすごく痛い・・・・。
振り向いた松田さんは、困惑した表情でわたしを見ている。
でも、もう無理・・・・。
「もともと大したお金も入ってなかったし、なくして困るようなものも入ってません。だからもう、本当にいいんです」
「・・・・でも」
「今思えば、歩いて帰れない距離でもなかったんです。なんで気づかなかったんでしょうね。本当にすみませんでした・・・・」
ゆっくりと松田さんの手がわたしから離れていく。
ためらうように、少しずつ・・・・。
「・・・・分かりました。僕のほうこそすみませんでした。見ず知らずの女性を一晩泊めるなんて、非常識すぎましたね」
「・・・・」
「おまけに引っぱり回してしまって。軽率でした」
そう言って、松田さんはぎこちない笑顔を作った。
今朝まで見ていたニコニコした笑顔は、もうどこにもない。
ごめんなさい、松田さん。
これが最後の嘘です。